- Employee Handbookは何のためにあるの?
- なぜ企業には就業規則が必要なの?
- 就業規則に不備がある場合のリスクは何?
今回は米国におけるEmployee Handbook(就業規則)について解説します。
記事を作成するにあたり、HR Linqs, Inc.のショウさん(@HrLinqs)に詳しくをお話を伺いました。
- 米国の大学卒業後、米系人事関連企業に勤務
- 2019年に独立、HR Linqs, Inc.を設立
- 在米日系企業に人事・労務のコンサルサービスを提供
@HrLinqs)は、米国人事・労務のプロなので、記事の信頼性も担保されると思います。
上記の通りショウさん(- EHBとは米国の就業規則で企業を守るもの
- 多くの日系企業はEHBを正しく運用できていない
- EHBに不備があると訴訟リスクが高くなる
記事の前半ではショウさん(@HrLinqs)によるEHBの解説を、後半では僕がアメリカ駐在中に使っていたEHBの一部を抜粋して深堀します。
グローバル企業の人事部門で海外HRに興味のある方、在米日系中小企業の海外駐在員又はHR(人事)に携わっている方は是非最後までお付き合い下さい。
米国における就業規則を徹底解説!【Employee Handbookの中身を見てみよう】
さてここから米国人事・労務のプロであるショウさん(@HrLinqs)にお話しを聞いていきます。
Employee Handbookとはアメリカの会社が持つ就業規則のこと
就業規則は企業を守る為のもの
就業規則 アメリカの会社が持つのことをEmployee Handbookといいます。
Employee Handbook(就業規則)は、アメリカの企業が自社を守る為に必要です。
なぜならアメリカは訴訟社会であり、会社と従業員の間でトラブルが発生した場合、従業員が会社を訴えるケースがよくあるからです。
- 企業理念や会社のビジョンを従業員に伝える為
- 企業が従業員を公平に扱うことを明確にする為
- 不当解雇、差別等従業員による訴訟リスクを回避する為
僕が働いていたアメリカ現地法人もショウさん(@HrLinqs)に依頼してEmployee Handbook(就業規則)を作成してもらいました。
また定期的にEmployee Handbook(就業規則)の更新もお願いしています。
在米日系企業の多くは就業規則を正しく運用できていない
Employee Handbookを見直しましょう
Employee Handbookと実態がかけ離れている場合、速やかに就業規則を更新する必要があります。
Employee Handbook なぜならは会社のルールを明文化したものであり、従業員は就業規則に基づいて行動するからです。
ショウさんによれば多くの在米日系企業がEmployee Handbook(就業規則)を正しく運用できていないとのことです。
- 就業規則が10年以上前に作成されていて更新されていない
- 就業規則では8:30始業となっているが、実態は9:00始業
- 有給休暇の数が就業規則と実態で異なる
就業規則 例えば上記の通りで、遠い昔にが作成されたまま更新されないと、Employee Handbookと実態に乖離が生じます。
就業規則に不備があると訴訟リスクが高くなる
Employee Handbook(就業規則)に不備があると、最悪の場合訴訟に発展するリスクがあります。
なぜならアメリカは訴訟社会で、企業と従業員の間でトラブルが発生した場合、従業員が会社を訴えるケースが多々あるからです。
在米日系企業でHR業務に従事されている方は、今一度Employee Handbookに不備がないか、今一度チェックした方が良いですね。
Employee HandbooのことならHR Linqs, Inc.に相談
冒頭にも書きましたが、ショウさん@HrLinqsは経験豊富な人事・労務コンサルタントです。
大手の在米日系企業には人事部門があり、人事や雇用関連の書類がしっかり整備されています。
しかし僕の勤め先のような中小企業の場合、駐在員が片手間で人事業務の対応をしているケースが多いです。
人事のプロがいない企業にとってHR Linqsさんは強い味方となってくれますよ。
- Employee Handbookの作成/更新
- 雇用関連書類の作成/更新
- 人事・労務関連のコンサルティング
在米日系企業で人事関連業務に不安を抱えている方は、是非HR Linqsさんに相談してみてください。
米国の就業規則には試用期間が記載されている
さてここからは、実際のEmployee Handbookを見ていきましょう。
米国における試用期間は3ヵ月ていど
試用期間のことを英語で“INTRODUCTORY PERIOD OF EMPLOYMENT”といいます。
新規で雇った人に対し3カ月間程度の試用期間を設け、その従業員が与えられた業務に適性があるかを見ます。
アメリカにおける試用期間ですが、概ね日本の同じです。
日本の場合雇用初日から健康保険等の福利厚生が付いてきますが、アメリカの場合試用期間中はそれがありません。
- 有給休暇がない
- 健康保険や歯科保険がない
3カ月間の試用期間を終えると、晴れて正社員となりベネフィット(福利厚生)を受ける権利を得ます。
試用期間中のパフォーマンスが低い場合は雇用を解除できる
3カ月の使用期間中にパフォーマンスが悪い、又は与えられた業務に適性がないと会社が判断した場合は雇用を解除することができます。
僕は人を採用する際、エージェントに人材を紹介してもらっていました。
エージェントを介して人を採用し、3カ月以内に雇用を継続できなくなった場合は無料で代わりの人を紹介してくれることがあります。
- 雇った人が3カ月以内に辞めてしまった
- パフォーマンスがあまりにも悪かった
- 雇って3カ月以内に職場で不正行為をはたらいた
例えば上記のような事情で、採用した人の雇用を継続できない場合です。
この辺は契約しているエージェントに問い合わせるか、締結した契約書を確認すると良いでしょう。
就業規則にある”EMPLOYMENT STATUS”とは雇用形態のこと
EMPLOYMENT STATUSとは雇用形態のことです。
米国では雇用形態によって働き方にも違いが出てきます。
EMPLOYEE CLASSIFICATIONS
EMPLOYEE CLASSIFICATIONSとは従業員の分類のことです。
米国のEMPLOYEE HANDBOOK(就業規則)には、従業員の分類が明記されています。
従業員の分類はザックリ下記の通り4つに分けることができます。
- INTRODUCTORY EMPLOYEE
- REGULAR EMPLOYEE
- TEMPORARY WORKER
- INDEPENDENT CONTRACTOR
一つずつ詳しく解説していきます。
米国では新入社員雇用後3カ月間試用期間として雇うケースが多いです。この間新入社員は会社が提供する健康保険や有給休暇が与えられません。3カ月を経過すると正社員となります。初めの3カ月間で適正がないと会社が判断した場合は雇用を解除します。
試用期間である3カ月間を過ぎると、Regular Employee(正社員)となります。正社員には健康保険、有給休暇等のベネフィットと呼ばれる福利厚生が提供されます。
Regular Employeeには、(A)Full-Time Employeeと(B)Part-Time Employeeの2種類があります。
定義は下記の通りです。
- (A)Full-Time Employee : 7.5時間/日労働の場合7.5時間 x 5日間 = 37.5時間/週以上労働する従業員
- (B)Part-Time Employee : 7.5時間/日労働の場合37.5時間/週以下働く従業員
派遣社員のことです。テンプと言ったりします。一時的に人が足りない時や正社員が病気、産休等で一定期間職場から離脱する時に雇用します。テンプには福利厚生が与えられません。
テンプのまま長期間雇用するのは良くないです。僕の勤め先では、ある従業員をテンプのまま5年程雇用していたことがありました。しかしHRコンサルタントのアドバイスによりその従業員を正社員にしました。
契約社員のことです。日本の契約社員とは少し異なります。会社と従業員の間で数カ月間から1年間程度の契約を結びます。契約満了が近づくと更新するか否かを協議します。更新しない場合は、以降雇用しないだけなので非常に分かり易いシステムです。
Independent Contractorにはベネフィット(福利厚生)が提供されません。福利厚生がつかない上、ある特定の分野におけるスペシャリストと契約するケースが多いので報酬は高めです。
Independent Contractorの契約ですが、例えばある人と1年間の契約を結んだ場合、パフォーマンスが低い場合でも契約期間が満了するまでは契約を切ることができません。
EXEMPT & NON-EXEMPT STATUS DEFINITIONS
EXEMPT & NON-EXEMPT STATUS DEFINITIONSとはEXEMPTとNON-EXEMPTの定義という意味です。
働き方についてですが、アメリカでは大きく分けて2つの定義があります。
- EXEMPT:給料が固定給で支払われる
- NON-EXEMPT:給料が時間給で支払われる
新聞なんかで「ホワイトカラーエグゼンプション」というのをよく見かけると思います。これは平たく言うと時給ではなく成果を基準に働く社員ということです。
以下EXEMPT & NON-EXEMPTについて詳しく解説していきます。
時間給ではなく固定給で雇用される従業員のことです。基本的に就業規則に記載されている時間は働くことになっています。必要に応じて規定されている時間以上、又週末も働くことがありますが、残業代や休日出勤代は支払われません。
EXEMPT EMPLOYEEは日本で言うところの外回り営業や管理職の様な働き方です。極端に言えばどこで何をしていようが成果さえ出していればOKです。逆に何時間働こうと成果を出さないと解雇の対象となってしまいます。
Exempt Employeeは扱いが難しい部分があります。なぜなら労働時間がグレーだからです。人によって意見がマチマチなのですが、1時間/日でも働いたら出勤と見なす必要があるという見方もあります。この辺は会社と従業員がよく揉めたりします。自分で判断せずHRコンサルタントや弁護士の助言を仰ぎましょう。
時間給で支払われる従業員のことを言います。規定時間を超えて労働する場合、又休日も労働する場合は残業代や休日出勤代が支払われます。
日本の会社で事務職をやられている方の場合、定時までは固定給、定時以降は時間当たりの残業代が支払われます。アメリカの事務職は定時も時間給なので、日本のシステムとは少し違いますね。
Employee Handbookに詳しくなろう
この記事では米国の就業規則(Employee Handbook)について解説しました。
- EHBとは米国の就業規則のこと
- 就業規則は企業を守るためのもの
- 在米日系企業の多くはEHBを正しく運用できていない
- EHBに不備があると訴訟リスクが高くなる
- 米国の就業規則には試用期間が記載されている
- 試用期間は3ヵ月程度
- 試用期間中であれば雇用を解除できる
- EMPLOYMENT STATUSとは雇用形態のこと
- EXEMPTは固定給
- NON-EXEMPTは時間給
大半の在米日系企業がEmployee Handbookを持っていると思います。
しかし米国における就業規則をしっかり読み込んで、中身を理解できている人はそれほど多くないでしょう。
アメリカに駐在していて現法を経営されているかた、人事を担当されている方はEHBを理解し訴訟リスクを低減しなければなりません。
jin_icon_bulb color=”#e9546b” size=”21px”]就業規則に不備があり、会社と従業員間で揉めると最悪の場合訴訟に発展してしまいますよ。
それとググるとテンプレートがたくさん出てきますが、EHBの自作はおすすめしません。
アメリカのHRに関する法律はよく変更が入りますので。
Employee Handbookの作成や更新はHRコンサルタントか弁護士に相談してください。
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