私がまだ20代前半の頃、とある会社の面接会場にて・・・
面接官、私の履歴書と職務経歴書をサーっと見る。私はアルバイトしかしたことがないので、履歴書と職務経歴書の中身はメチャクチャ薄い。
またダメだった。これで何社目だろうか。
大学卒業後就職せずアルバイトに明け暮れる

私の名はShine、Fラン大学を卒業後、就職せずに2年間アルバイトをしながらプラプラしていた。情けない話だが、当時の私は会社に就職してマジメに働こうという気が無かった。
ただのんべんだらりとプラプラするのは親に申し訳ないと思い、空いた時間を使って英語の勉強だけはやっていた。
私の様なアホでも継続すればそれなりに上達はするもの。就職活動する前にとりあえず英検2級を取得し、TOEICで700点を取った。
就職活動を開始するも不採用の連発に絶望する

いざ就職活動開始。大学卒業後2年間職歴に穴を開けてしまってはいるが、まあなんとかなるだろうと軽く考えていた。
ほどなくして何ともならない現実に絶望する。
まず書類選考が通らない。ウソだろ、2年のブランクがあるとはいえ、私はまだ20台前半なんだ、どこかに拾ってくれる会社があるはず。
そしてすごくはないが、英検2級を持っていてTOEICで700点を取った。英語出来る人は就職で有利って誰かが言ってたぞ。
しかし現実は甘くなかった。時は就職氷河期、有効求人倍率が低く求職者で溢れかえっていた時代。2年もプラプラしていたヤツを雇う会社等どこにも無かった。
とにかく求人雑誌をめくっては、電話をかけたり履歴書を送ったりを繰り返していた。
当時はインターネットがまだ発達しておらず、求人雑誌を購入して電話をかけたり、履歴書を会社に送るのが主流だった。
社会人経験がない

その内、数社から面接の連絡が入った。いざ面接に臨むと冒頭のセリフ連発だ。
ことごとく不採用。不採用を食らいすぎて最早悔しさなど1ミリもない。慣れとは恐ろしいものだ。
アルバイトが職歴にならないことくらい知っていたが、就職において社会人経験がそんなに大事だとは知らなんだ。
ヤバい、ヤバいぞ。社会人経験が無いから雇ってもらえないんだったら、私は一生就職できないぞ。
正社員は諦め派遣社員として働き社会人経験を得る

ん?ちょっと待てよ、派遣社員だったらイケるんじゃないか?そして派遣社員として働けば社会人経験が得られるじゃないか。
そう考えた私は派遣会社にコンタクトし、早速面談を受けた。
銀ブチ眼鏡にオールバックのオッサン、メッチャ胡散臭い。根性ありそうだからOKか、ココ大丈夫か?とはいえ社会人経験の無い私に選択肢など無い。
早速派遣先を紹介してもらえるようなので良しとしよう。何やら出向先では貿易関係の仕事をするらしい。
2日後、銀ブチオールバックと一緒に派遣先へ向かった。私の他に3人の求職者が居た。20代の人が1名、30台が1名、40台が1名。職探しに苦労しているのは私だけでは無さそうだ。
派遣先の部長と面談
銀ブチオールバックに連れられ中規模の会議室に通された。待つこと5分、派遣先の部長が会議室に入ってきた。
早速銀ブチオールバックが、全員との面談を済ませ全員すぐにでも働けることを派遣先の部長に伝えた。
派遣先部長が全員の履歴書にサッと目を通した後に言った。
ん?私たち一言も発していないが、これでOKなのか?派遣先から銀ブチが信頼されているということか?まあ良い、これで働ける。これで社会人経験が得られる。
一緒に来ていた他の求職者と軽く会話を交わしながら私たちは帰路についた。
その夜私は職に就ける喜びを噛みしめていた。派遣社員とはいえやっと社会人として働き、社会人経験が得られるのだから。
それまでガテン系のバイトばかりしていた私からすると、オフィスワークはキラキラのイメージしかなくメチャクチャ浮かれていた。
しかしこの時点では誰も知らなかった。翌週、派遣先で実際に働き始めて、そのキラキラしたイメージが木っ端みじんに粉砕されてしまうことを。
そして同時に銀ブチオールバックや派遣先が、なぜ私たちの様なド素人の求職者を受け入れていたのかが明らかになる。
時は就職氷河期、大したスキルを持っていないド素人を、サクッと雇ってくれる会社がまともな訳ないのである。
派遣先は超体育会系ブラック物流企業『なにわエクスプレス』

派遣先は『なにわエクスプレス』という、国際物流業界では中堅規模のフォワーダーだ。
条件は良くないが全ては社会人経験の為
勤務地は辺鄙な場所にあるので、通勤に片道2時間弱かかる。そして派遣社員なので月給ではなく時給だ。
💰ちなみに時給は1,200円、社会保険完備、有給休暇もあるし、交通費は全額支給してくれる。
ただし賞与はないし、先に入った人の話によると昇給も無さそうだ。
通勤距離は遠いし、条件も良いとは言えないが贅沢は言ってられない。とりあえず仕事頑張って社会人経験を積もう。
時給 | 1,200円 |
---|---|
社会保険 | 完備 |
交通費 | 全額支給 |
有給休暇 | 有り |
賞与 | 無し |
昇給 | 噂では無し |
衝撃のなにわエクスプレス勤務初日
🚊2時間弱電車に揺られて職場に到着。オフィスの中にいる人に声をかけた。
なるほど、せっかくスーツできたのだが制服があるのか。周りの人皆私服で通勤しているな。私も明日から私服で通勤しよう。
制服に着替え先ほどの人に声を掛けると、私が使うデスクに案内してくれた。
初日なので早めに出社したのだが、私の周りにいる人は既に業務に取り掛かっていた。仕事熱心な人達だな。
かるく挨拶すると、みなさん笑顔で応えてくれた。皆良い人そうだ、まずは安心。
始業時間の朝9時になると従業員が一ヵ所に集まりだした。毎朝朝礼をやるようだ。
なんだ?朝礼って連絡事項なんかを共有すると思っていたが違うのか?
絶叫してるぞ・・・
サービス業でも無いのになぜ『いらっしゃいませ』なんだ。ここは辺鄙な場所にあるオフィスで来客はほとんどないはずだ。
斎藤会長とは壁にかけてある肖像画の方のようだ。皆斎藤会長の肖像画に向けて絶叫していたのですぐに分かった。
しかし、朝からなんなんだこれは。貿易の業務を扱うオフィスワーカーに絶叫させる意味なんてないだろ。
銀ブチオールバックが『根性ありそうやな』と言っていたのは、こういうのに耐性がありそうだということか。
気合と根性とパワーハラスメント

なにわエクスプレスで重視されるのは気合と根性だ。返事する時も大きな声を出すと評価される。
入っては辞める派遣社員
なにわエクスプレスで働き始めて1週間後、同時期に入った派遣社員が会社に来なくなった。体育会系が合わず辞めたようだ。
色々教えてもらってありがたかったが、聞きたくない情報まで聞いてしまったな・・・。
まあ、社会人経験が無くてバイトばかりしていた私をすんなり雇う時点でマトモな会社ではないわな。
本社にいる営業課長の洗礼を受ける
ある日本社にいる営業課長の鈴木さんから私宛に電話がかかってきた。
輸出するには、搬入して通関しないといけないので、明後日に届けるなんて無理だ。まだここに荷物ないし。
ゼッタイ届かんぞ。しかもなぜ荷物が届かないだけで殺されなきゃならないんだ。エライとこ来てしもた・・・。
上司に相談すると『あ~アレは挨拶みたいなもんや。鈴木さん口悪いけど人殺したりせーへんから大丈夫や』
当たり前だろ。人を殺したりはしないが、殴る蹴るはするということじゃないのか?ヤバい、ヤバいぞ。
とりあえず2年程辛抱してココで働き、その後は転職しよう。いずれにしても激安派遣を続ける訳にはいかない。
Shineは当面この会社で働こうと腹をくくり、同時に転職に向けての準備をはじめたのだった。
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